忠津陽子『恋の手ほどきABC』(忠津陽子コレクション2)

恋の手ほどきABC
忠津陽子コレクション2
(さわらび本工房)

初版	2005年5月15日

収録作品初出:

拝啓兄上さま	別冊マーガレット	1972年 10月号
恋の手ほどきABC	週刊マーガレット	1973年 35月号
雪の降る日は	別冊マーガレット	1974年 1月号
新シンデレラ物語	別冊マーガレット	1975年 6月号

拝啓兄上さま
カラーページが収録されています。
パムはちょっときれいで明るくておまけに気だても優しい女の子。
そんな子であれば、言い寄る男は数知れず…となるところ、命が惜しければ近づくなとも言われる始末。
それもそのはずパムの兄で小説家のロバートがあまりに過保護で、パムに近づく男を片っ端から投げて飛ばしてしまうからです。
兄一人妹一人の家族ゆえ、おまえを守るのは俺の義務だとロバートは言いますが、男の子の方がパムを避けるほどになってしまい、ありがた迷惑です。
そんなパムに告白したのが文学部部長でハンサムなカート。一度はロバートに投げ飛ばされたものの、男は自分の恋のためならどんな敵とも戦うと強気です。
パムとカートが仲良くなっていることを知ったロバートはパムをミッション・スクールに転校させようとしますが、いつまでも子供じゃないと怒ったパムは置き手紙を残して独立をはかります。
新居を探すパムの前に現れたカートが救いの手を差し出した…と思いきや、彼は兄に迫害されている女の子を幸せにしたいんだ…!なんて言い出しました。
カートは自分ではなく、カートの理想を叶えたいだけだと知ったパムは逃げ出します。
それを追うカートと家出したパムを探すロバートが不幸にも遭遇、取っ組み合いの喧嘩を始めてしまいました。
あほらしいと思いつつ、止めに入るも女は引っ込んでろと投げ出されたパムは激昂。二人に一発お見舞いし、「もうたくさん! あたしにだって意思も感情もあるのよ 2人ともいったいそんなこと考えたことある? 人をバカにして! 2人ともかってにいつまでも自分の夢と格闘してるがいいんだわ」と泣きながら訴えますが、パンチが強かったのか二人は倒れてしまいます。
その後、入院している二人の見舞いに来たパムは言います。「あたしさとったの男の人には女がついてなくちゃってこと」「だって男の人って本当にいつまでも子どもみたいなんだもの」

恋の手ほどきABC
広場で開催されている美人コンテストに乗り込んで来たのはマリン率いるウーマンリブ。女性の商品化反対!女性の地位を守れ!と高らかに叫ぶ彼女たちの前に現れたのが、日本の男らしい生き方を研究する日本精神研究会会長のラルフです。女のくせにはずかしいとは思わないのか!なんて言うものですから、彼女たちにボコボコにされてしまいました。
マリンが通うアザレア学園では、ウーマンリブ運動を抑えるため、日本精神研究科なる講座を開設しました。講師はもちろんラルフです。マリンは男尊女卑礼賛など時代錯誤も甚だしいと反対しますが、ラルフの口車に乗せられ、開講を賭けた家事対決をすることになります。
もちろん仕掛けたからにはラルフの方が上手で、マリンはてんでだめです。
女っぽいことではなく男性的なことなら引けを取らないと強がるマリンに対し、ラルフが持ち掛けたのが飲み比べ。しかし、ここで一計を案じたラルフの行動をきっかけに事態は急展開をむかえ…
この作品のオチはなかなか皮肉がきいていますね。

雪の降る日は
恋をするより恋させよ、それが女の幸せだと教えるママと、いつもママには頭が上がらないパパの間で育ったキム。
しかしそのためか彼女は女の幸せは好きな人に尽くすことだと考え、ボーイフレンドのデビッドには何でもしてあげるのです。が、近頃はあまりに度が過ぎるため、デビッドの生活はめちゃくちゃになってきているのです。
それとなく諭すために、息子を偏愛する過保護な母親をテーマにした映画を見せますが、あんなに良い母親なのにと言い出す始末。
キムとデビッドの恋の行方は一体どうなるのでしょうか…?

新シンデレラ物語
初単行本化の作品。
シンデレラは継母や姉たちに虐められて…おらず、気立ては良く、家事好きですすんでやってくれるものの、あまりにドジで大切なお皿は割るわ、晴れ着はアイロンで焦がすわと被害は甚大です。姉曰く「まるでわたしたちがまま子いじめしてるみたいに見える」。
シンデレラと王子さまを結ぶためにやってきた魔女も、想像していた美人とは違うシンデレラに対し「はげしいイメージダウン」「ああ興がさめた」と投げやりです。
夫の形見の品々までも壊された継母は波風たてずに家から追い出すため、魔女は役目を果たすため、二人協力してシンデレラを王子に嫁がせることにしました。
魔女はシンデレラに、おまえは王子さまの花嫁になる運命なのだよとか言って、王子さまの花嫁を決めるパーティにシンデレラを送り込み…
「ほんとうにあれで王子を見そめられるんですの?」「まさか! そこまで王子の趣味を疑っちゃ悪いよ」
「なんか場違いなのがひとりまじってるハトのむれにスズメが一羽……」
最後までギャグ路線でお気に入りの作品です。